あかいふうせん

 これは、ことばのない絵本である。ことばはないが物語はある。それをここに記すのはよそう。私が読めば私の物語、あなたが読めばあなたの物語になるのだから......。
 母親はこの絵本を子どもに読み聞かせる時「これはふうせんね」「これは花ね」「アラ、蝶々」と絵の説明はしないでほしい。子どもの心の中では、風船は膨らむ前からリンゴなのかもしれないし、花は咲いたときから実は蝶々なのかもしれないのだから。作者が子どもの心になって描いたこの本を、自由に楽しませてやりたいものだ。お母さん自身の想像力がかれていたとしても「ハイ、これを読んでお話を作りなさい」などと、間違っても強制はダメ。
 日本版に挟み込まれている渡辺茂男氏の解説が素晴らしい。

関連作品: