1988年2月

 海外にいて日本を、日本の文化を、評価するのは難しい。
 同じ発言でも増幅されて受け取られるからである。母国を客観的に見られる優位さがあるが、愛国心は身贔屓に変じがちだし、逆に感情的に必要以上に批判的になったりもする。だからといって母国を振り返るこの良きチャンスを無にしてもらっては、なお困る。
 冷静で客観的な情報を多方面から仕入れ、じっくり腰をすえて、子ども達に語ってやりたいものである。

Snow Falls Inside Out―ゆきがふる...うらがえしにふる

 題からもわかるように、日本語と英語の二本立てである。
 但し、英詩は巻末にまとめて記されている。
 雪空を見上げていると、光の加減で不意に白い雪が灰色に変わり、まわりが明るく見えることがある。
 この絵本は光で変わるその雪景色を、瞬間瞬間にとらえて描いている。
 そしてその雪の変化は、動かぬ同じ景色のなかにドラマを運び込んでしまう。
 雪に振りこめられたぼくが卵のなかの生まれない小鳥になり、そこに色とりどりのト音記号が降り注ぐ。
 幼い心にふと現れては消えてしまう、あの幻影を、言葉と絵でとらえて見せてくれる。
 作者の英詩も日本語も、言葉の響きが美しい。


どろぼうだどろぼうよ

 真夜中に目を覚ましたエドワードとエリザベスは、部屋に誰かいることに気づく。
 さあ、誰だろう。
 二人は恐ろしさに身を縮め、足の指さえ動かさないようにして、一晩中息をひそめていた。部屋にいるのは泥棒だと思い込んでいるふたりの恐怖心が伝わってくる。
 これは、小さな子ども達のスリルとサスペンスの絵本。


はれときどきぶた

 三年生の則安は毎日、日記をつけている。ある日お母さんに盗み読みされたのを知って、でたらめな「あしたの日記」を書いてお母さんをおどろかそうと思いつく。
「トイレにへびがいた」とか「えんぴつをてんぷらにして食べた」と書いた次の日、そのとおりになってしまっても日記を読んだお母さんがわざとやっているのだと思い込んでいた。ところが「はれときどきぶた」と書いた翌日、本当にぶたが振ってきそうになったからさあ大変。
 この奇想天外な物語は、爆発的な売れゆきを示しているが、ぶたが降るという発送がユニークでおもしろい。矢玉四郎の漫画風の絵は、その太い線と大きな目で、物語をより暖かいものにしている。
 なおこの本の英語版が、"Fair, Then Partly Piggy"のタイトルで、同じく岩崎書店から出ている。


さいごの捕鯨船

 日本人の生活から遠ざかってゆくクジラ。
 未知な部分を多く残すだけに興味深く、かん油や鯨肉の味を知らない子ども達に、伝えたい一冊。
 捕鯨全面禁止を、冷静に考えるための良い材料でもある。日本の食文化の一部が無理やり抹殺されようとする今、ぜひ読んでほしい。