1987年7月

 海外では容易なのに日本では難しいのが早寝早起きの躾である。日本の学校が遅刻には厳しいわりに、親も世間も、子どもの夜更かしをとがめない。起こす時は戦争だとこぼす親が「毎晩二時三時まで深夜放送を聴きながら勉強して......」とニコニコ話している。
 戦争騒ぎで起こすより、睡眠時間が八時間とれるように寝かすことの方がたいせつであり、勉強でも読書でも寝るべき時間にはやめさせて電気を消すのが親の義務である。

キャベツくん

 おなかがすいたブタのブタヤマさんが、キャベツくんに「おまえを食べる!」と言うと、キャベツくんが、「ぼくを食べると、キャベツになるよ!」と答える。すると空に、大きなキャベツになったブタヤマさんの姿が浮かびあがる。
 ヘビがきみを食べたら?タヌキが食べたら?ゾウが食べたら?ノミが食べたら?とブタヤマさんが聞くたびに、空にその姿をしたキャベツが浮かびあがる、という発想は、映像時代ならではの感がある。
 おなかをすかせているブタヤマさんがかわいそうになって「おいしいレストランがあるから、なにかごちそうしてあげるよ」というキャベツくんの優しさがうれしい。


鏡のなかのねこ

 この本は、一種のタイムトラベルの物語である。
 ニューヨークの富裕な家庭のひとりっ子イリンは、これといった欠点がないのに、学校ではいじめられっ子。家でも自分への愛情の薄い母親の態度に思い悩む毎日を送っている。ところがある日、頭を石にぶつけて気を失ったイリンは、古代エジプトの時代で、「イルン」という名前で暮らす少女として目覚める。そしてここでもまた、イリンと同じように母親や友達のことで悩むのだった。
 いじめは日本だけの問題ではなく、また経済的に裕福であっても子どもが幸せとは限らないのである。


いのしし親子のイタリア旅行

 ファンタジーと言うよりも、これはノンフィクション。ある日、ある時、イタリアの街角で、実際にあったできごとに相違ない。
 一見ひどく生マジメで、実はスマートなユーモリストである某児童文学作家と、美人で明るくて買い物好きな奥様と、そういう両親に育てられた小さなウリン坊の、イタリア旅行記と思っていただきたい。
 血わき肉躍る冒険小説ではないが、家族旅行にありがちなアクシデントが次々と起こって、それなりに波乱万丈である。
 この一冊を持ってイタリア旅行をしてみるもよし、読んでイタリアの空に思いをはせるのもいいだろう。


なつの あさ

 絵が素朴でいい。
 「なつの あさは みんな しろい」......今の日本で、どれだけの子どもがこういう朝を知っているだろうか。たいせつにしたい自然を感じさせる本である。