1985年9月

 読書の意義は海外でも国内でも同じだが、海外ではその内容よりも、使われていることばがよい日本語であるか否かがより重要な要素となることもある。外国語の方は現地校の友人など付き合う相手からもよい外国語が身に付くが、反面日本語は話す相手も少なく、よい本でも読ませない限り、友達同士の乱れた会話が身に付いてしまうことが多い。

どうしてカはみみのそばでぶんぶんいうの?―西アフリカ民話より

 カ(蚊)が嘘をついたものだから、イグアナはばだみんばだみん、ニシキヘビはわさうすわさうすと、森は大騒ぎ。そしてサルが誤ってフクロウを殺してしまったので、森は夜が明けなくなる。そこで王様ライオンが動物会議を開いて調べてみると――というストーリー。
 次々と現れる動物達の擬声語が楽しい。擬声語は原文の英語をそのままカナにしているが、英文のほうが全体にリズミカルなので、英語版もぜひ手に入れて読んでほしい。絵のよさでも話題になった本。


魔女の宅急便

 人間の父親と魔女の母親から生まれたキキは、十三歳になった時、魔女になる決心をする。空飛ぶホウキと一匹の黒猫を連れて親元を離れ、それまで魔女のいなかった町に住み着くのだが、町の人に魔女だと言うことを理解してもらうまでが大変。しかし親切なパン屋さんの助けで宅急便屋さんを始め、少しずつお客さんが増えていく。
 現代にはもういないはずの魔女だが、こんな魔女なら一人ぐらい自分の身近にいるのではないかと思えてくる。
 同い年の女の子のラブレターをついのぞいてしまったキキが、思い出しながら書く詩"どうしても かくれんぼ"が素晴らしい。


思春期内科

 自殺、登校拒否、家庭内暴力、拒食症など、中学生から高校生にかけての子どもの悩みは尽きない。こういった大きな問題から、初潮、自慰、便秘と言った身近な事柄まで、思春期内科として一貫した視点でとらえ、その症状と対応について医学的に冷静に述べられている。
 読み物としてとらえると中学生には多少難しいが、自分の悩みの項を拾い読みするだけでも十分役に立つことだろう。親や先生にはぜひ一読を薦めたい。思春期の子を持つ家庭に、さりげなく備えておきたい1冊である。


名前といわれ野の草花図鑑 1

 日本の草花の名が、歴史や昔の生活用品にちなんでつけられていることが一見して分かる写真が添えられており、なるほどと納得させられる。