1985年4月

 国や地域、学校によって図書館の使用法はずいぶん変わってくる。日本では本の管理を重視するあまり、低学年の児童には図書室を利用させない学校が多いが、肝心なのは本をしまっておくことではなく、読ませることである。本を大切にするということは、もちろん教えるべきだが、大人の側では消耗品と覚悟しておきたい。日本にも欧米にも、子どもに読み聞かせをしてくれる図書館は多い。幼い頃から親子で図書館を利用する習慣を!

がいこつさん

 かわいいがいこつさんが眠ろうとするのだが、なにかをし忘れた気がして眠れない。そこで、忘れたものを思い出そうとあちこち捜して歩く。
 がいこつはなにも着ないから、忘れているのは洗濯ではない――それもそうだな。がいこつが病気になるはずはないから病院でもない――それもそうだな。と次々に忘れものを捜して歩きまわり、ようやく寝る前の歯磨きを忘れていたことを思い出す。
 がいこつを無理に擬人化せず、そのまま描いているのだが、がいこつさんはうまく人間社会に溶け込んでいる。
 ――それもそうだな、という繰り返しが耳に残る。


おかあさん、おいてかないで

 これはルーマニアの物語。平和な日々を過ごしている渡り鳥の一家が、ある日、狩人に追われる。「出てはいけませんよ」という母鳥の言いつけを聞かずに飛び上ってしまった兄さん鳥は、羽に散弾を受ける。幸いにも狩人は、小鳥と悟って草むらにうち捨てて行くが、冬が迫って仲間が南の国に去っても、羽が傷ついた兄さん鳥は飛べない。
 母親の愛情、家族の絆、自然の厳しさを作者は冷静に最後まで描いている。
 大きな字、平易な文で書かれていて、一見小学校低学年向きのようだが、大人にも十分読みごたえがある。


魔女集会通り26番地

 魔法使いの姉弟、グウェンダリンとキャットが修行を積みながら成長してゆく話だが、普通の人と魔法使い達とが同じ社会で生活しているという設定が目新しい。
 その社会の中で魔法使い達は、普通の人と不公平にならぬよう、魔法を制限されているのだが、姉のグウェンダリンはその掟が不満で、もっと強い魔法を使いたがっている。
 宇宙にいる自分を呼び寄せて入れ替わってしまう、というSF的スケールもあり、ところどころ人生を考えさせられるようなセリフも挿入されていて、男の子にも女の子にも面白い。


はなさかじじい

 昔話の中でも、花さかじじいはよく知られているが、語り手によって少しずつ異なる。
 このお話の中では、梅、桃、桜が一時に咲くのだが、日本では二月に梅三月に桃、そして四月は花が咲いて、入学、新学期のシーズンだと話してやりたい。