1984年12月

 欧米では毎年同じクリスマス物語を読んで聞かせる親が多い。子どもは年毎に違う思いでその物語を聞きながら大きくなる。もちろん一冊とは限らない。
 ブリッグスの"さむがりやのサンタ""サンタのたのしいなつやすみ"のような漫画絵本から、ディケンズの"クリスマス・キャロル"まで、十二月の声を聞く頃からクリスマスの本探しに歩き回るのは楽しい。

サンタクロースのすきなおはなし

「たとえプレゼントがなくても、クリスマスはあるんだよ。さあおすわり。わしがだいすきなおはなしをきかせよう......」とサンタクロースが森の動物達に最初のクリスマス――キリストの誕生を話して聞かせると、みんなもっとクリスマスが好きになった、というお話。
 デパートの商戦に踊らされている日本のクリスマスと欧米のと、両文化の掛け橋のような本である。現地校ではきっとキリスト生誕の劇をするだろうが、この機会に教会のミサなどにも参加して、宗教行事としてのクリスマスも体験させておきたい。
 この本は英語版が海外で先に出版され、逆輸入の形で日本語版が出た。いかにも心の暖かそうなサンタクロースが描かれている。


サンタクロースっているんでしょうか?

 八十年前、ニューヨーク・サン新聞に八歳の少女の質問に答える社説が載った。子ども達の永遠の問いに答えるF・チャーチのこの名文は「バージニア、おこたえします」の語りかけで始まり、広く読み継がれてきた。
 二ヶ国語を喋れる子どもが、母国語しか話せない子どもより早く、もう一つ外国語をマスターできるのは、頭の中に外国語を覚える回路が既にできているからである。それと同様で、幼い頃サンタクロースを信じて育った子どもは「あんなものは嘘よ」と言われて育った子どもより、見えないものの存在を信ずる回路の分だけ容量が大きい。そしてこの能力は科学者にとっても大切なものである。
 この本は子どもをごまかすことなくサンタクロースの存在を証明してくれる。


魔女ジェニファとわたし

 これはクリスマスというより、ハロウィンパーティーの日から話が始まる。お友達のいないエリザベスは魔女だと名乗る奇妙な少女ジェニファに出会い魅かれてゆく。見習い魔女にして貰ったエリザベスは魔女の修行を積み、飛びぐすりを二人でつくるのだが、できあがる日にけんかしてしまう。が、そのけんかをきっかけにお互いの理解が深まり本当の友情が生まれる。本の好きな女の子なら誰でも一度はこんな魔女になるものである。


かさじぞう

 十二月は日本人にとっては歳末、師走、年の瀬など、一年間の生活に区切りをつけ、このおじいさんのように新年を迎える準備をしなければならない。
 この本は東宝映画から長岡輝子の朗読をつけたフィルムも出ている。赤羽末吉の絵も語られることばも美しい。