1988年7月

 五月某日、SF作家のロバート・A・ハインラインが亡くなった。その訃報は、世界中のSFファンにとってかなりのショックで、日本でも、大きな書店で彼の本が品切れになりつつある。
 この欄でも以前『夏への扉』を紹介したが、彼の作品にはSFの背景に、いつも非常に人間的でロマンティックなものが描かれている。
 好きな作品をより深く知るためにも、海外にいる間に作家の故郷、ゆかりの町を訪れておきたい。

ぼくしんかんせんにのったんだ

 海外でも幼い子ども達に親しまれている「くまたくん」シリーズ(英国The Bodley Head、米国Philomel Books、仏国l'école des loisirsなどから出版)の中で、とりわけ男の子に好かれている一冊。
 田舎のおじいさん、おばあさんの手紙に誘われて、くまたくんは、お父さん、お母さんといっしょに、新幹線こだま号に乗ることになる。
 色鉛筆の優しいトーンを生かした大友康夫の絵が、くまたくんの世界に誘い込む。
 くまたくんの質問に何でも答えてくれるお父さんが良い。このころに子どもの信頼を得ることができれば、大きくなっても対話はとぎれない。


ふしぎの国のアリスの算数パズル

 題からも分かるように、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の物語の展開を追って算数パズルを解いてゆくようになっている。
 本自体の構成も凝っていて、冒頭にある前文は、この本の題を文頭に織り込んだことば遊びでもあり、原典に出てくる詩のパロディでもある。
 アリスの数々の冒険につれて読者も種々のパズルを解くが、アリスが夢から醒めて物語が終わっても、読者には最後のクイズが待っている。
 読書好きな子どもは、とかく理数的な物の見方を忘れがちである。また親の思い込みでそう育てられてしまうことも多い。
 子どもはちょっとしたきっかけで、思いがけない方向に伸びてゆく。この本がそのきっかけになるかもしれない。


ガニメデの少年

 母親を失って、父親とふたり暮らしの少年ビルは、料理の上手な、なかなか考え深い少年だが、父親とふたりで移住するつもりだったガニメデ星での生活が、新しい母と妹との四人暮らしだと知ってショックを受ける。
 着いてみたガニメデ星での生活も、地球で契約した条件とは大違い、思いがけぬ苦労の中でビルは人間として成長してゆく。
 舞台を地球から宇宙に移し壮大なSFドラマに仕立てられているが、子どもから大人になろうとする少年達の心の動きと、未開の地を切り拓いてゆく男達の夢も、共に織りなされている。


うしかいさんとたなばたさん

 七夕の物語はたくさんあるが、これは中国の伝説を紙芝居にしたもの。
 カラリントントンとはたを織るたなばたさんが、一年にたった一度、好きな人に逢えるようにと祈るのが、七夕の行事である。