虹を盗んだ男

 絵を描くことの好きな少年クリスは、ある日虹の美しさに心を奪われ、何とかその色をキャンバスに写そうと夢中になる。本業の木こりも休みがちになり、町の人々からも忘れられてひとりぼっちになるが、何年か後、クリスの小屋の近くを通りかかった友人は、小屋から虹の色があふれ出ているのを見つける。
 ところどころに出てくる大人のことばがなければ、もっと幼い子にも楽しめるのに、と残念だが、いかにも手描きらしい絵と美しい色づかいが、子どもの心をひきつける。
 創造力(クリエイティヴィティ)を大切にする海外の教育を受けている子どもには素直に読める本だが、今の日本の技術指導的絵画教育を憂うる身には、複雑な読後感の残る一冊である。