1987年1月

 病院の待合室やPTAの集まりで、幼い子どもを連れた若い母親が、「静かにしなさい!」と連呼している姿をよく見かける。
 大人の集まりに子どもを連れていかない、とか、他人に迷惑をかけさせないという基本的な躾はきちんとしてほしいが、どうしてもというときは、小さな絵本を数冊、バッグに入れて行くと良い。小型絵本は集中しないと読めないので、子どもはすぐ静かになる。大きな飴玉をやるより知的な母親に見えますよ。

巨人のはなし―フィンランドのむかしばなし

 巨人の伝説は各国に残っているが、この本はフィンランド西南部に残る巨人の話を集めたものである。
"キスコの畑に今も残る砂の山は、巨人が畑に運ぶ砂をこぼしたもの""アッコ湖は巨人のおかみさんが流した涙"など地形に関した話や、人間と巨人とのかかわりを語り継いだものなど、さまざまな巨人が登場する中に共通して流れているのは、大きすぎた者達の悲哀であろうか。
 巻末にこの伝説を生んだフィンランドの自然と古い街々のありさまが、訳者によって書き加えられているのも興味深い。


小さなスプーンおばさん

 いなかに住んでいる普通のおばさんが、ある日突然ティースプーンの大きさに縮んでしまうが、このおばさん、少しも慌てず、猫や犬やねずみをおだてたりすかしたり、舌先三寸で困難を切り抜ける。
 子ねずみ達と自動車ごっこをしたりもする。こんな楽しいお話が適度な長さで書かれているので、小学校低学年から楽しめるし、読んであげれば、もっと小さな子にも良い。
 英語版は英語力のない子にも読めるようになっているものを、ここに紹介してある。


グイン・サーガ

 100巻まで書き続けると張り切っている作者は、このシリーズを1979年から書き始め、現在第25巻まで発行され、ほかに外伝として7冊が出ている。
 『豹頭の仮面』という題で第1巻が書かれているように、これは豹の頭を持つ戦士グインの数奇な運命を描き続ける物語。面白い本というのは先が気になってつい読むのが早くなるが、私は風邪を口実に1日6冊のペースで読んでしまった。
 つい宿題をサボりたくなるようなこの本を、勉強に追われる子ども達に紹介するのは罪なのだが、教育ママへの弁解にこの本の効能をあげると、何と言っても作者の語彙の豊富さである。海外にいてこれだけの語彙に触れる方法は、ちょっとほかにない。
〈関連〉
グイン・サーガの原作一覧


雪の夜に語りつぐ

 冬の夜長の家族団欒に声を出して読みたい1冊。いつの間にか子ども達は「むかあしね、あったてんがな」「いきがポーンとさけた」などの繰り返しの心地よさに、昔話の世界へと誘われる。もう一つ読んでとせがまれる後引き豆のようなお話が詰まっている。