かわいそうなぞう

 戦下の食糧難の日本で、動物園の象が死んでいった。芸をすれば餌がもらえるものと、得意な芸を繰り返し披露しながら飢え死にした象の物語は、何回読み返しても涙ぐまずにはいられない。
 戦争の悲惨さを訴え、叫び続ける反戦文学は数多いが、時としてその叫びが大きすぎて、子どもの心を素通りしてしまうことがある。ところが、この小さなエピソードは、それが小さくて身近であるだけに、子どもの目にもしっかりととらえられ、戦争の恐ろしさが心に刻み付けられる。

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