ハチのおかあさん

 アシナガバチの巣づくりを、最初から最後まで、美しく鮮明な写真でつづっている。
 ある春の日、偶然ハチの巣づくりを見付けた喜び、一つひとつの部屋づくり、産卵、幼虫に青虫を食べさせる様などを、克明に撮影し、簡潔な文章を添えている。
 作者自身が付きっきりで観察しただけに、アシナガバチへの愛情が読者にもひしひしと伝わり、夏の終わりに心ない人間がいたずらにその巣を壊したシーンを見て、横に落ちていた空カンと棒切れを、写さずにはいられなかった作者の心情がよく分かる。
 巣に、花に、群がるハチの写真は、生態というより、ドラマを感じさせる。