はじめに

 海外にいる日本の子ども達が、いつも幸せでいてくれるように、それが私達、国際児童文庫協会の願いである。忙しい親に放任されてる狭間を少しでも補えるように、せめて良い本を届けたい。正しい日本語で書かれた楽しい本、子ども達を[とりこ]にしてしまうような本を集めたつもりである。

 この本は国際児童文庫協会(ICBA)が発足して五年目から十八年間(M氏が担当した数年を除いて)、月刊『海外子女教育』誌に書きつづけた、海外に暮らす子ども達の為の「子どもの本棚」欄をそのまま集積したものである。本当は国際児童文庫協会として出版したかったのだが、「唐様で書く三代目」から、ようやく四代目の代表に代わり、なんとか建て直そうと基礎から固めている現在のICBAスタッフには、余分な事業を行う余裕はなさそうなので、小林悠紀子として出版することにした。また、「子どもの本棚」の仕事自体、本来、小林個人に依頼されたものであり、「子どもの本棚」というコラム名も、実は私の発案である。ICBAの活動が広がるに従ってスタッフは運営に手をとられ、本の勉強が疎かになりそうなのを恐れて、当時の『海外子女教育』誌の担当者に無理を言って、選本と文章には私が責任を持つという条件で、ICBAのスタッフが全員で書く事にした。本は私が選んで、その本を気に入った人が推薦文の下書きを書いた頃もあり、様々な状態を経て、現在は読書委員会という独立した組織として、会員各自が選んだ本を原稿と共に送ってきて、読書委員会代表の後藤彩子さんが四冊を組み合わせ、私が文章の調子を統一して、掲載している。

 書き手の交代に合わせ、大体三つの章に分けたが、重複して書いている人もあり、原稿の届くのが遅れて私が書いてしまった事もあり、後半は書き手のマーク(イニシャルとは限らない)をつけるようにはしたものの、選本と文の責任はやはり私にある。
 まだ続いている「子どもの本棚」だが、今年の夏の戦争特集で、一区切りにした。
 章と章の間に、ICBAの動きを書き加えてみたので、ご併読頂ければ幸いである。
 お世話になった皆様に、感謝を込めて。
二〇〇二年十二月
小林悠紀子

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