1986年7月

 父親に連れられて本屋にくる子どもは、例外なく有頂天である。父親なら好きな本を選ばせてくれると確信しているらしい。
 ところが近ごろ、ときどきその確信が裏切られる。問題集を2冊も買わせた父親は論外だが、怪獣図鑑より童話を選ばせたかった父親の気持ちは分からぬでもない。こんな時はもう1冊、より良い本をいっしょに買ってやれば、子どもは読み終わってから、父親の選択の正しさを知るに違いない。

ドラキュラーだぞ

 二匹の小うさぎが穴を掘っていると、ドラキュラーの住んでいる地下室に出てしまう。
 ちょうどおなかが空いていたドラキュラーは「ちを持ってこい」と二匹に命令する。
 ところが小うさぎ達が持ってきたのは、チーズ、チョコレート、ちらしずし、とちのつく食物ばかり。「赤いものだ!」というと、りんご、赤い花、そして赤ワイン......。
 赤ワインを見たドラキュラーはちと間違えて......。
 作者はお得意のはり絵で、ちょっと変わったドラキュラーのお話を聞かせてくれる。


はんてんをなくしたヒョウ

 斑点を一日中数えてばかりいるヒョウを見たサルは、いたずらを思いつき、ヒョウが眠っている間に黄色いペンキで斑点を一つ塗りつぶしてしまう。目を覚まし、斑点をまた数え始めたヒョウは、"斑点が一つない!"と大騒ぎ。
 やがて雨が降り、ペンキが洗い流されて、隠れていた黒い斑点が表れたので、ヒョウはホッとする。そして一部始終を見物して笑いすぎたサルは、木からころげ落ち、ペンキのカンの中に......。
 表題の物語のほかに、「からかわれたジャッカル」「カメレオンがわらった」など、4話が収録されている。ヒューエットの動物のお話はこのほかに『ゴリラぼうやのパセリさがし』『かげをみつけたカンガルーぼうや』などの全8巻から成り、いずれも動物を主人公とした、ほのぼのとした楽しい物語である。


おいしいパンいかが

 かえるが池の両側に、こんがりきつね色のパンを焼くキツネー・ベーカリーと、真っ白なパンを焼くウサギー・ベーカリーがある。両方共、売り上げを伸ばそうとあの手この手でやり合うが、きつねはうさぎのために、ひょんなことから焼いて作ったせともののうさぎを残しておくし、うさぎはわざわざそれを買いに行くような、ひそかな友情もある。
 ところがここに、ツンツンヒョロリという悪いヤツが現れて、ふたりに次々と妙なものを売りつける。ついにふたりは、ツンツンヒョロリに教えられたテレビというものに夢中になって、パンを焼くことも忘れてしまう。さァ大変!


たなばたこびとのおはなし

 七夕には願いを短冊に書いて飾った笹を川に流す、という風習が小さな物語になっている。
 シリーズはほかに、おしょうがつ、まめまき、ひなまつり、こいのぼり、おつきみの全六冊。